こんにちは。税理士の筒井一成です。
社員食堂や弁当のまかない、そして残業時の夜食。正しいルールを押さえれば、会社は福利厚生費として経費化しながら、従業員の所得税ゼロを実現できます。本稿ではわかりやすい言葉で、50%・3,500円ルールと夜食300円ルール、インボイス制度、税務調査の落とし穴までを解説します。
目次
まかないが非課税になる2大条件
① 従業員負担が食事価額の50%以上
② 会社負担分が月3,500円(税抜)以下
この2つを同時にクリアすれば「経済的利益なし」と判断され、現物給与として課税されません。いわゆる50%・3,500円ルールです。
50%・3,500円の計算例
1食800円×10食=8,000円。従業員負担4,500円(56%)、会社負担3,500円。
→従業員負担≧50%、かつ、会社負担が月3,500円ちょうどなので非課税クリア。会社負担が3,501円になると会社負担分全額(3,501円)が給与課税対象なので要注意です。
課税となる4つのパターン
- 従業員負担が50%未満
- 会社負担が月3,501円以上
- 現金で「食費手当」を支給
- 役員専用・特定部署のみ対象
現金支給の場合は全額が給与課税となる点が落とし穴です。
会計処理と福利厚生費の仕訳
要件を満たすときの典型仕訳:
業者から弁当購入時(会社経費計上)
(借)福利厚生費 7,000 / (貸)現金 7,000
給与天引き時(従業員負担分の徴収)
(借)給与 4,500/ (貸)雑収入4,500
従業員徴収分は雑収入で相殺。要件を外した場合は会社負担分を給与手当へ振替え、源泉徴収も必要です。根拠は所得税基本通達36-38の2。雑収入の消費税区分は課税対象(税込み)。
深夜勤務の夜食が非課税になる特例
残業・宿日直時に夜食を現物で無料提供する場合、または、夜食現物を支給できず、代わりに300円(税抜)以下の現金を勤務1回ごとに支給する場合 は給与課税しなくてOKです。これが夜食300円ルール。超過すると全額が課税対象なので、上限管理が重要です。
税務調査で狙われる落とし穴
- 徴収額と給与規程が一致しない
- 食数管理がICカード/POSでできていない
- 役員だけ会社全負担
- 飲料・菓子をまかない原価に含める
食数台帳・徴収記録・原価表を保存し、経済的利益なしを証明できる体制を構築しましょう。
まとめ
ポイントは3つ。①50%・3,500円の基本ルール、②夜食300円の特例、③インボイスの適格請求書保存。これらを守れば福利厚生費で経費計上しつつ、従業員の所得税ゼロを実現できます。月次で原価と徴収額をチェックし、税務調査にも揺るがない運営を行いましょう。
税理士/元資格の大原法人税法非常勤講師(2019年~2024年の5年間)
1982年生まれ
平成31年3月 税理士登録
2021年3月に独立 筒井一成税理士事務所を川崎市宮前区にて開業
2024年3月 事務所を世田谷区等々力に移転
現在世田谷区等々力を拠点として活動中。主に法人の顧問や相続のご相談をお受けしています。
ブログでは役に立つ税金の情報などを中心に発信していきます。
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