令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(以下、インボイスといいます)が始まります。
売上1,000万以下の免税事業者がとるべき対応は具体的にどうするのが良いのか考えてみます。
目次
インボイスとは
インボイスは2023年(令和5年)10月1日より導入される新制度です。
インボイスとは何か?難しい説明は抜きにすると、今まで普通に発行していた請求書に、登録番号というTから始まる13桁の番号をもらって、令和5年10月以降はその13桁の番号を請求書に記載する必要があるということです。
番号のもらい方ですが、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出するします。私、筒井も実際にインボイス登録を申請しました。申請してから約2週間ほどで登録番号が通知されました。
インボイスの登録申請を税務署に行い、登録通知をうけると「登録事業者」となります。
誰が対象か?
インボイスの対象はすべての事業者が対象です。
ここで問題になるのが、インボイスの登録を受ける場合、今まで消費税の申告をしたことがない小規模の事業者(免税事業者)も対象となるということです。
何が問題となっているのか?
インボイスの登録をする場合、必ず課税事業者になる必要があります。
課税事業者とは、消費税を申告納付する義務を負っている事業者の事です。
今まで課税事業者として消費税を納めている方は、今まで通りの運用になりますのであまり問題は生じません。(事務負担の増大はありますが)
問題は免税事業者です。
免税事業者とは?
免税事業者とは、個人であれば前々年、法人であれば前々期(これらを基準期間と言います)の売上が1,000万円以下であれば、当年または当期において消費税の計算をする必要がないし、消費税の申告納付義務も発生しない事業者を言います。
国としては納税義務を免除することで、小規模な事業者をバックアップするという趣旨があります。
免税事業者が今後どうなるのか?
インボイスの発行をしたい場合、必ず課税事業者になる必要があるといいました。
つまり、免税事業者がインボイスを発行したいなら、本来免税事業者の方でも課税事業者になって消費税を納めてね、ということです。つまり、売上が1,000万円以下であっても免税にならないということです。
インボイスの登録は任意です
インボイスの登録事業者になることは強制ではありません。
免税事業者が今まで通り消費税の申告納付をしないで行きたいのであれば、登録事業者の申請をしなければいいだけです。
インボイスの登録をしないとどうなる?
インボイスの登録をしなければ今まで通り消費税を納めない免税事業者になるので、免税事業者のままで問題ないのか?
これは、自社の販売先がどのような相手なのかで判断する必要があります。
自社の販売先が「事業者」がメインの場合
「インボイスを下さい」と言われることが想定されますので、インボイスの登録を検討したほうが良いかと思われます。
自社の販売先が、事業者と一般消費者が混在している場合
やはりこれも事業者の割合が多ければ「インボイスを下さい」と言われることがあると思います。この場合もインボイスの登録を検討したほうが良いかと思われます。
自社の販売先が、一般消費者のみ
販売先が個人などの一般消費者の場合、「インボイス下さい」などという方はいないでしょうから、インボイス登録は必要ないと思います。
自社がインボイスを登録しない場合、インボイスを下さいと言われても発行ができません(番号がないので)。
相手先はインボイスをもらえないと、仕入税額控除ができません。したがって、相手先は、課税事業者と免税事業者で販売価格が同じ場合、免税事業者からの仕入れの方が、払った消費税を預かった消費税から控除できず、消費税の負担が増すことになります。※消費税の計算方法は次の項目で解説しています。仕入税額控除が段階的に減少する経過措置があります。
インボイス登録により課税事業者になったら
インボイス登録事業者になる覚悟を決め、いざ消費税の申告をやるとなった場合、消費税の計算方法には「本則課税」と「簡易課税」の2つの方式があります。
本則課税とは、次の算式で納付税額を計算する方式です。
「預かった消費税(主に売上)-払った消費税(仕入税額控除)=納付する消費税」
ただ、この本則課税は預かった消費税と払った消費税を1つ1つ集計しなければならないので、非常に手間がかかるやり方です。預かった消費税は売上の消費税だから、集計はそこまで負担にはならないですが、特に払った消費税の集計は大変です。
一方、簡易課税は次の算式で計算します。
「預かった消費税-預かった消費税×みなし仕入れ率=納付する消費税」
この方式は、売り上げの預かった消費税が分かれば計算できる方式です。払った消費税は一切集計する必要がありません(無視します。)
簡易課税のメリット・デメリット
簡易課税メリットとして、圧倒的に事務負担はかからないので本則課税よりもお勧めです。
算式の中の「みなし仕入れ率」は業種によって決まっています。例えば卸売業は90%、小売業なら80%のように、業種区分に応じて乗じるパーセンテージが異なりますので、自社の業種を確認して簡易課税の税額シュミレーションを行うことをおすすめいたします。
簡易課税のデメリットとして、簡易課税を選択すると2年間は本則課税を適用することができなくなります。つまり、簡易課税を選択すると2年間は簡易課税を継続しなければなりません。俗に2年縛りと言います。
また、基準期間の売上高が5,000万円以下でないと簡易課税による計算ができないので、注意が必要です。
結局どうすればいいのか?
販売先との関係性を一番に考慮する必要があると思います。
取引先に事業者が多いのであれば、やはり登録事業者になることも覚悟が必要かと思われます。
ただ、消費税の申告納付をするとなれば、資金面に大きな打撃があります。
自社の資金繰りを考えて、消費税の納税が厳しいのであれば、販売先との価格交渉が必要になってくるのかと思います。
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この記事を書いた人
税理士/ファイナンシャル・プランナー/元資格の大原法人税法非常勤講師(2019年~2024年の5年間)
1982年生まれ
平成31年3月 税理士登録
2021年3月に独立 筒井一成税理士事務所を川崎市宮前区にて開業
2024年3月 事務所を世田谷区等々力に移転
現在世田谷区等々力を拠点として活動中。主に法人の顧問や相続のご相談をお受けしています。
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