【税理士が解説】不動産購入にかかる税金と節税テクニック完全ガイド

こんにちは。税理士の筒井一成です。

不動産投資は「買う前」が勝負。
今回は登録免許税不動産取得税など“買った瞬間”に発生する税金から、消費税還付を狙う実務ポイントまで整理します。

法人個人どちらが有利?」「法人で買うメリット・デメリットは?」といった永遠のテーマも掘り下げるので、これから物件を購入される予定の方は必見です。

不動産購入時に払う税金まとめ

税目 ポイント
登録免許税 住宅用家屋の所有権移転登記の税率は0.3%※(※軽減特例は令和9年3月31日まで延長)、土地は1.5%(※軽減特例は令和8年3月31日まで)
不動産取得税 取得後に都道府県へ納税。住宅用は評価額×1/2×3%へ軽減(期限:令和9年3月31日)
印紙税 売買契約書1千万円超~5千万円以下なら1万円(軽減措置)
消費税 土地は非課税、建物は10%。賃貸収入が課税か非課税かで還付可否が分かれる
固定資産税・都市計画税 毎年1月1日時点の所有者へ課税。住宅用地(200㎡まで)は固定資産税1/6・都市計画税1/3に圧縮

不動産業で使える節税メニュー

  • 青色申告特別控除:電子申告+複式簿記で65万円控除
  • 減価償却の“加速”ワザ:
    └ 中古物件は短い耐用年数を設定し損金前倒し(あくまでも課税の先送り)
  • 修繕費 vs 資本的支出の判定:3年以内の定期修繕なら修繕費として即時経費化
  • 法人化による税率ダウン:800万円以下は15%、超過分は23.2%(ただし法人税のみ。法人住民税及び事業税も同時に納めるため、おおむね実効税率30%を見込んでおく)
  • 消費税還付スキーム:建物を課税仕入、高額特定資産ルールに注意

高額特定資産ルールとは?

高額特定資産とは、1つの取引単位で税抜1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産(=建物・構築物・機械装置など耐用年数1年以上の資産)を指します。
不動産では建物部分の取得対価が該当するケースが多く、「土地は非課税・建物は課税」という消費税の原則とも深く関わります。

課税期間中に高額特定資産を購入すると、その年の初日から3年間、事業者免税点制度(課税売上1,000万円以下で免税)を利用できません。しかも簡易課税制度の選択も不可。
要するに「消費税を必ず申告・納税する身分」が3年ロックされるイメージです。

還付を受けるのと引き換えに納税が3年発生するので向こう3年の納税額の試算(タックスプランニング)が必要です。

法人と個人、どちらが節税に有利?

結論
利益が年800万円を超え、長期保有で家賃収入を積み上げるなら法人が有利
譲渡益狙いの短期売却や年収が低い場合は個人でも十分節税可

比較のキモ

  • 最高税率:個人55%(住民税込) vs 法人実効約30%
  • 損失通算:個人=他所得と相殺。(不動産所得)、法人=10年間繰越
  • 社会保険:法人役員報酬には厚い保険料が乗る。会社負担が発生し、会社と個人で払うことになり実質2倍になる。

法人名義で買うメリット・デメリット

◎ メリット

  1. 税率の安定:高所得期でも法人税率は天井が低い
  2. 経費計上範囲が広い:役員社宅や車両費を損金化しやすい
  3. 相続対策:株式で承継しやすく“争族”を回避
  4. 融資枠拡大:決算書ベースで評価。個人よりレバレッジを掛けやすい

▲ デメリット

  1. 設立コスト・維持コスト:定款認証や顧問料、均等割7万円~
  2. 社会保険強制加入:役員報酬に保険料
  3. 配当二重課税:売却益を配当で抜くと法人税+所得税

不動産購入で消費税還付を受ける6つのステップ

  1. 課税事業者選択届を取得前に提出(免税期間でも可)
  2. 賃料を課税売上にする(店舗・事務所など)│住宅賃貸は非課税
  3. 区分経理で課税仕入と非課税仕入を完全分離
  4. 建物価格1,000万円以上は高額特定資産ルールで3年縛りに要注意
  5. インボイス制度対応:適格請求書の保存が必須。
  6. 還付後に賃料を住宅用へ切り替える「調整リスク」を理解(免税点外し。一定の税額調整がされてしまう。)

まとめ:損しないためのアクションプラン

✅ 軽減措置が切れる令和9年3月31日前に契約・登記を完了する
✅ 青色申告や減価償却をフル活用しキャッシュアウトを先送り
✅ 高額特定資産ルールとインボイス制度を押さえ消費税還付を確実に
✅ 本格的に規模拡大するなら法人スキームで長期的な節税を設計

「税金は知らない人から多く取られる」――先に知って、うまく使って、不動産投資を加速させましょう!