こんにちは。税理士の筒井一成です。
株式投資は「会社で買ったほうが節税できるのでは?」
とよく聞かれます。本稿では法人が株式を取得する場合の経費性と、法人保有と個人保有のどちらが得かをなるべく簡単な言葉で解説します。
目次
法人で株を買ったら「経費」になるのか?
株式の購入代金は流動資産(有価証券)又は投資その他の資産(投資有価証券・関係会社株式)として貸借対照表に計上され、取得時点では損金(経費)になりません。
売買手数料や名義書換料など直接取得に要した費用も取得価額に含めることが法人税基本通達で定められています。
期末に時価が著しく下落し減損(物損等の事実)の要件を満たせば、評価損として損金算入が可能です。
法人が受け取る配当の税務──受取配当等益金不算入
法人が株式を保有すると配当金は益金(収益)になりますが、持株割合に応じて20%〜100%が損金算入される制度があり、これを受取配当等の益金不算入といいます。完全子会社株式なら100%不算入、5%以下の「非支配目的株式」は20%不算入です。証券会社から買ってくる株式はほとんどが非支配目的株式になります。
法人が株を売却したときの課税
売却益は益金として法人所得に合算され、通常の法人税率(中小法人で年800万円超部分 23.2% など)+地方法人税・事業税等がかかります。実効税率は約30%前後が目安です。
たとえば、100万円で買った株を120万円で売ったら20万円部分のみに法人税等約30%がかかります。
個人で株を持った場合の課税
譲渡益も配当所得も原則20%(所得税15%+住民税5%、復興特別所得税を含め20.315%)の申告分離課税。
NISA口座なら一定額まで非課税、株式同士の損益通算や翌年以降3年間の損失繰越控除も利用できます。
法人と個人、どちらが得か?
- 法人有利:
・事業赤字と株式損失を通算できる。
・課税後も会社に内部留保を残せるので再投資が可能。新規事業への投資も展開。融資審査にも強くなる。
・受取配当等益金不算入で実効税率を下げられる。 - 個人有利:
・一律20%で税率が低め。
・NISAの非課税メリット。
・配当控除や損失繰越で家計と合算しやすい。
概ね少額・短期投資なら個人、長期・高額投資や事業とのシナジー重視なら法人が有利になりやすいと言えます。
判断のポイント
① 会社の資金繰りに余裕があるか
② 事業損益と通算したいか
③ 将来の配当受取戦略
④ NISAやiDeCoなど個人側の非課税枠の活用状況
⑤ 所得分散や相続対策の必要性
最適解は会社と個人のキャッシュフローをトータルで設計することです。迷ったら税理士へ早めにご相談ください。
税理士/元資格の大原法人税法非常勤講師(2019年~2024年の5年間)
1982年生まれ
平成31年3月 税理士登録
2021年3月に独立 筒井一成税理士事務所を川崎市宮前区にて開業
2024年3月 事務所を世田谷区等々力に移転
現在世田谷区等々力を拠点として活動中。主に法人の顧問や相続のご相談をお受けしています。
ブログでは役に立つ税金の情報などを中心に発信していきます。
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