概要
土地建物や車などの固定資産を買った場合には、本体価格とこれに伴ってかかる付随費用があります。
減価償却の対象となる金額は、原則として本体価格と付随費用を合計した金額となります。これをあわせて取得価額といいます。
本体価格は当然に取得価額となりますが、注意しなければならないのは、付随費用も取得価額になるという点です。
原則として固定資産の購入時にかかった費用はすべて取得価額とすべきですが、例外的に取得価額に含めなくても良いものがあります。それぞれ例示を挙げていきたいと思います。
取得価額にしなければならないもの(購入の場合)
本体価格(購入代価)は当然に取得価額に含めなければなりません。
本体価格にプラスする資産の取得のために要する付随費用のうち次のものについては、法人税の計算上取得価額に含めなければなりません。(あくまでも代表的なものの例示です。これが全てではありません。)
取得経費
- 引取運賃
- 荷役費
- 購入手数料
- 関税
- 運送保険料
事業供用費用
- 据付費
- 試運転費
- 改良費
土地建物に係る費用
- 土地建物に係る従前の使用者に支払う立退料
- 土地付建物を取得した場合の建物の取壊費用
取得価額に算入しないことができるもの
以下のものは、取得価額に算入しないことができます。つまり、支出時に経費にできるものとなります。
登録費用・税金関係
取得に伴う税金(関税以外の税金)
不動産取得税
登録免許税
借入金の利子
借入金をして建物を建てた場合、事業供用前の借入金利子については、取得価額に含めても含めないで経費にすることも可能です。事業供用後については、取得価額ではなく、期間費用になりますので支払利息として経費になります。
土地建物を取得した場合の取得価額
土地建物の消費税の内訳がない
土地建物を取得した場合には、契約書の売買代金が本体価格となり、取得価額となります。
契約書に土地と建物の売買代金の内訳があればそのまま取得価額で問題ないのですが、分かれていないことが多いです。
もし消費税の記載があれば10%で割り返せば建物の売買代金が逆算することができますが、消費税の記載すらないケースも結構あります。
そのような土地と建物の売買代金が分かれていない場合には、固定資産税評価額などの客観的な時価の比率で土地と建物の売買代金を按分して本体価格とすることが合理的な計算方法と考えられます。ほかにもいくつか方法はありますが、固定資産税評価額は手に入りやすいので実務ではよく使われる計算方法です。
建物部分は減価償却の対象ですが、土地は減価償却の対象となりません。土地は価値が減らないと考えられているため、減価償却ができません。
固定資産税・都市計画税精算金
取得価額に含めなければなりません。減価償却の対象です。
固定資産税・都市計画税精算金は、一見すると税金のように思えますが、「精算金」という言葉がついているので税金ではありません。固定資産税・都市計画税は、1月1日の資産の所有者に対して課される税金のため売主はすでに納付を済ませています。この1年分の税金を買主と売主で期間で精算しているに過ぎないので、土地建物の購入金額と同じ取り扱いをします。つまり取得価額になります。
仲介手数料
土地建物の購入に係る仲介手数料は購入手数料に該当するため、取得価額に含めなければなりません。減価償却の対象です。
登記登録費用
登録費用のため、取得価額に含めないことができます。
司法書士に支払う費用などです。支出年度の経費にすることができます。
不動産取得税
税金関係の費用のため、取得価額に含めないことができます。
車両を購入した場合の取得価額
車両を取得した場合には次のような取扱いになります。
車両本体価格・付属品
本体は当然取得価額に含めなければなりません。カーナビなどの付属品を購入時に注文する場合は取得価額となります。減価償却の対象です。
自動車税・重量税
税金関係は取得価額に含めないことができます。
自賠責保険料
保険料は取得価額に含めないことができます。ただし、支払日から1年を超える期間は前払費用や長期前払費用として期間配分が必要です。1年以内のものは税務上の短期前払費用の適用が可能です。
※短期前払費用とは、前払費用として期間配分しなければならないものでも1年以内のものなら経費にしても良いという特例です。ただし、継続して経理することが要件です。
未経過自動車税・未経過自賠責保険料
自動車税・自賠責保険料であっても未経過のものは取得価額に含めなければなりません。減価償却の対象です。
未経過自動車税・未経過自賠責保険料は未経過固定資産税と同様に、売主に払う税金の精算であり、税金そのものではないため購入代金として取り扱うためです。消費税は課税仕入れとなります。
リサイクル預託金
取得価額ではなく、預け金など資産の勘定科目で処理します。したがって払った時点では経費にはなりません。
車両を売却した際はリサイクル預託金という金銭債権を売却相手に譲渡したものとされ、車両を廃車にした際に初めて経費に振り替えます。この時点で消費税の課税仕入れとなります。
検査登録代行費用・車庫証明代行費用その他登録費用
登録費用は取得価額に算入しないことができるもの例示に該当し、取得価額に含めないことができます。
納車費用
取得価額に算入しないことができるもの例示に該当しないため、取得価額に含めなければなりません。減価償却の対象です。
まとめ
固定資産の購入時の取得価額についてお話ししました。
取得価額を間違えてしまうと修正申告が必要になります。しかも、減価償却は毎年行うものなので修正が非常に大変です。
購入時に取得価額になるかならないかの判断は慎重に行わなければなりません。
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この記事を書いた人
税理士/ファイナンシャル・プランナー/元資格の大原法人税法非常勤講師(2019年~2024年の5年間)
1982年生まれ
平成31年3月 税理士登録
2021年3月に独立 筒井一成税理士事務所を川崎市宮前区にて開業
2024年3月 事務所を世田谷区等々力に移転
現在世田谷区等々力を拠点として活動中。主に法人の顧問や相続のご相談をお受けしています。
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