役員賞与を経費に落とすには?事前確定届出給与の届出が必要

役員に支給する賞与(ボーナス)は、一定の要件を満たさないと一切損金には認められません。損金と言うのは専門用語で俗に言う経費に落ちるものと言うイメージです。
では、損金に算入されるためには、どのような手続きをすればいいのかを解説していきます。

事前確定届出給与の届出書の提出

役員賞与を法人税の計算上、損金の額に算入するには、税務署に所定の時期に一定の事項を記載した事前確定届出給与の届出書を提出しなければなりません。

役員と従業員の違い

役員は従業員と異なり、会社に雇われているわけではありません。(委任契約といいます。従業員は雇用契約)
会社の経営を委託されて、契約期間中職務を執行し、その対価として役員報酬を受け取ることになります。
役員報酬と言っても、所得税の計算上、普通の従業員さんと同様の給与所得になります。

職務執行期間とは?

会社の形を委託されている契約期間を、職務執行期間といいます。
職務執行期間とは、通常、定時株主総会から、次の定時株主総会までの期間になります。会計期間と異なるので注意が必要です。
例えば3月決算の会社で、株主総会を5月25日に開催している場合、会計期間は4月1日から3月31日ですが株主総会の日から、翌年の株主総会までが職務執行期間になります。

事前確定届出給与の届出書の提出期限

通常の場合

事前確定届出給与の届出書の提出期限は、株主総会の決議をした日から、1月を経過する日と会計期間開始の日から4月を経過する日のいずれか早い日になります。
株主総会の1月後までと覚えておけばよろしいかと思います。
例えば、株主総会が6月25日の場合、届出期限は7月25日になります。
期間の数え方の細かい話にはなりますが、株主総会は株主総会を開催する時間は、会社によってそれぞれ違いますので、初日はカウントしません。(初日不算入)したがって、6月26日から1月を経過する日は7月25日となります。

新しく会社を設立した場合

設立の日以後2月を経過する日になります。
5月1日に設立した場合、6月30日になります。会計期間は0時から始まるので、初日算入。

臨時改定事由、業績悪化改定事由

臨時改定事由、業績悪化改定事由など、特別な事情がある場合は臨時株主総会で決議した日から、1月以内に届け出をすれば改定が可能です。
臨時改定事由
臨時改定事由は、例えば社長が亡くなられて、 2代目が急遽社長に就任するなどが該当します。
業績悪化改定事由
業績悪化改定事由は、業績が大きく悪化した場合に認められる改定です。
単に売り上げが減少した等は認められません。取引銀行から、役員報酬の減額を打診されたりなど、第三者から言われて、役員報酬を下げざるを得ないような状況でないと認められませんので注意です。
実務的には、どこまでの業績悪化なら認められるかどうかというはっきりしたラインはないので難しいところです。利害関係者からの圧力で下げざるを得ないと言うところがポイントでしょうか。

事前確定届出給与の届出が必要のないケース

株主が多数存在するような非同族会社(株主が他人同士で沢山いる会社のイメージ)で、毎月定期的に給料をもらっていない非常勤役員に払う賞与は届出不要です。
中小企業はほとんどが同族会社(社長1人オーナーや家族経営の会社)がほとんどなので、あまり関係ないと思いますが。

最後に(個人的な見解)

今回は事前確定届出給与についてお話ししました。
実務的には、賞与手続きは、実務的に面倒な部分があるので毎月役員報酬をもらっている方がほとんどだと思います。
役員報酬を毎月定額でもらおうが、賞与としてもらおうが、所得税や住民税に変わりはありませんが、年間累積573万円を超える場合には、社会保険料の上限となるので、それ以上の支給額は保険料負担率が変わらないので、そのことを利用した節税手法などがあります。
その節税手法は、社会保険の知識だけではなく、法人税、所得税、住民税などの税金の深い知識も必要になるため、使用にあたってはかなりの上級テクニックとなります。
手法を使われる方は、専門家に相談しながら決定することをお勧めします。
今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。