こんにちは。税理士の筒井一成です。
今回は別表五(一)の書き方についてお話ししていきたいと思います。
以前記事で別表四の書き方を解説しましたが、別表四と同様に別表五(一)は申告では必須の書類となります。
別表五(一)とは
別表五(一)とは、法人税の申告書に添付する書類の1つで、「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」のことをいいます。
別表四は所得金額を算定することから税務P/L(P/Lとは会計の損益計算書のことをいいます)と呼ばれますが、別表五(一)は税務上の純資産を表すため税務B/S(B/Sとは会計の貸借対照表のことをいいます)と呼ばれます。
つまり、決算で作成した貸借対照表の動きを別表五(一)にも反映していくというのが基本的な記載方法となります。
別表五(一)Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書の書き方
まずは別表五(一)Ⅰ利益積立積立金額の記載方法です。
記載欄に空白がたくさんありますが、全部埋める必要はありません。上半分はほとんどの中小企業では空白になることの方が多いです。
(1)欄 利益準備金の記載
決算書類の一つである「株主資本等変動計算書」の利益準備金の動きを反映させます。※画像では別表五(一)の区分には番号に()かっこは付いていませんが、説明の便宜上()かっこを付けて解説していきます。
利益準備金がない場合には記載は不要です。
利益準備金の当期首残高を別表五(一)の①欄、当期末残高を④欄に転記します。
当期中に増減があった場合には、減少した場合には②欄に正の値、増加した場合には③欄に正の値を転記します。(別表五(一)の②欄はマイナスの性格を帯びており、③欄はプラスの性格を帯びています。)
(株主資本等変動計算書)
(別表五(一)Ⅰ)
(2)~(24)欄の記載
(2)~(24)欄は空白になっていますが、申告調整の項目が無ければ記載する必要はありません。申告調整とは、決算で計上した項目で法人税の計算上は認められないものに一定の調整を加えることをいいます。
(別表五(一)Ⅰ)
別表四において、下記の申告調整があった場合に記載します。(ほんの一例です。全てではありません。)
- 貸倒引当金繰入超過額
- 賞与引当金繰入超過額
- 退職給与引当金繰入超過額
- 減価償却超過額
引当金に関してのみ言えば、貸倒引当金やその他の引当金を決算で計上していなければ記載するものはありません。
法人税では、決算で計上した引当金は原則として認められません。(期末資本金1億円以下の一定の中小企業は貸倒引当金のみ認められていますが、一定の限度額があります。)※税制改正で変わる可能性もあります。
(25)欄 繰越損益金の記載
(25)欄 繰越損益金の記載は、株主資本等変動計算書の繰越利益剰余金と連動します。
株主資本等変動計算書の繰越利益剰余金の当期首残高を別表五(一)①欄に転記し、当期末残高を④欄に転記します。
②欄は①欄と同額を転記し、③欄は④欄と同額を転記します。(この繰越損益金の欄だけは他の項目と異なり記載方法が特殊です。このような記載方法を洗替え記載といいます。)
(株主資本等変動計算書)
(別表五(一)Ⅰ)
(26)欄 納税充当金の記載
(26)欄 納税充当金は未払法人税等の当期中の動きを反映させます。
会計帳簿の未払法人税等の当期首残高を別表五(一)①欄に転記し、当期末残高を④欄に転記します。
②欄の当期減少は未払法人税等の当期における会社取り崩し額を記載します。普通は全額取り崩しますので①欄と同額になりますが、取り崩さない場合には一致しないことになります。
③欄の当期増加は会社の当期繰入額を記載します。
借方 法人税、住民税及び事業税 ×× 貸方 未払法人税等 ××
上記の会計処理で増加した未払法人税等の金額を記載します。
実際に納付する金額とは異なる場合があります。あくまでも未払法人税等の帳簿の動きを記載することになることに注意が必要です。(会社によっては未払法人税等の科目は実際の支払税額よりあえて多めに計上したりすることもあるためです。)
(会計帳簿)
(別表五(一)Ⅰ)
(27)~(30)欄 未納法人税等の記載
(27)~(30)欄 未納法人税等の記載も特殊な記載方法になります。
①欄は、「別表五(二)租税公課の納付状況等に関する明細書」の①欄「期首現在未納税額」が連動しますので、別表五(二)から転記します。この欄はマイナスで表示します。マイナスの符号(△)は印字済みです。画面では「-」で表示されています。
この①欄の金額は、前期の確定申告で発生した法人税、道府県民税、市民税の発生税額を記載します。この欄に記載する金額は実際に納付することになる税額です。
※別表五(二)についても申告書提出には必須の書類です。
(別表五(一)Ⅰ)
(別表五(二))
(27)欄未納法人税及び未納地方法人税の②欄の金額は、①欄+③欄(中間)の合計額を転記します。(前期確定分+当期中間分の実際納付額です。)
(29)(30)欄道府県民税、市町村民税も同じ要領で記載します。
③欄の確定欄には当期確定申告で発生した税額を記載し、④欄には①~③欄を横計した金額を記載します。普通は③欄の確定の金額と同額です。
(別表五(一)Ⅰ)
(31)欄 差引合計額
(1)~(30)を縦計します。
利益積立金額の明細の記載は以上です。
別表五(一)Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書の書き方
別表五(一)Ⅱ資本金等の額の計算に関する明細書は、利益積立金額の明細書に比べると記載する項目は少ないので簡単です。
(32)欄 資本金又は出資金
決算書類の「株主資本等変動計算書」の資本金の動きを反映させます。
一般社団法人など資本金がない場合には記載は不要です。基本的には前述した利益準備金と書き方は同様です。
資本金の当期首残高を別表五(一)の①欄、当期末残高を④欄に転記します。
当期中に増減があった場合には、減少した場合には②欄に正の値、増加した場合には③欄に正の値を転記します。(②欄はマイナスの性格を帯びており、③欄はプラスの性格を帯びています。)
(33)欄 資本準備金
資本金と書き方は同様です。株主資本等変動計算書に資本準備金が載っていれば記載します。
(36)欄 差引合計額
(32)~(35)欄を縦計します。
別表五(一)Ⅱの記載も以上です。
まとめ
別表五(一)の解説は以上です。
別表五(一)は別表四と連動しているので、セットで作成していくものとなります。さらに別表五(二)とも連動していますので、併せて別表五(二)も作成する必要があります。
今回の別表五(一)は、別表四の処分欄の「留保」を集めたものとなります。(未納法人税等は留保項目ではありませんが例外として記載します)別表四についても詳しくお知りになりたい方は過去の記事の別表四の書き方で詳しく解説しております。
今回のお話しは以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
筒井一成